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乳がんの疫学の最新動向

乳がん罹患率(パート2)

罹患率についても、死亡率と同様に、一定期間の罹患数(推計による)を単純にその期間の人口で割った租罹患率と、集団全体の罹患率を基準となる集団の年齢構成(基準人口)に合わせた年齢調整罹患率とが用いられます。

がん年齢調整罹患率の推移をみると、全がんでは男女とも1990年代前半までは増加し、その後は横ばいで、2000年前後から再び増加傾向にあります。男性では胃がん、肝臓がんなどで近年減少傾向がみられますが、直腸がん、前立腺がんなどは増加傾向にあります。一方、女性では、胃がん、肝臓がんなどで近年減少傾向がみられますが、乳がん、卵巣がん、肺がんなどで増加傾向にあり、特に乳がんと卵巣がんは1975年から一貫した増加傾向が続いています。(図1,4)

女性のがんの年齢調整罹患率は、2006年の推計によると、乳がんが最も高く人口10万対65.6人であり、53,783人が罹患しています。年齢別にみた女性の乳がんの罹患率は30歳代から増加しはじめ、40歳代にピークを迎え、その後は次第に減少する(図5)。出生年代別にみると、死亡率と同様に、最近の出生者ほど、罹患率が高くなっています。

世界的な年齢調整罹患率の年次推移の傾向をみると、東アジアの人々の乳がん罹患率は、ヨーロッパ人や米国白人に比べ、一貫して低いのですが、日本と同様、中国などの東アジア諸国でも明らかな上昇傾向を示しています。ヨーロッパ諸国は同じレベルの年齢調整罹患率であり、上昇傾向を示していますが、最近一部の地域では減少傾向も見られています。米国でも、ほとんどの人種で継続的な上昇傾向にあります。米国では白人が最も高い罹患率を示し、次に黒人ですが、日系人の移民の罹患率も急速に増加し、日本に住む日本人よりも高い罹患率を示しています*3。米国のがん罹患データはSEERからダウンロードできます。また、国際がん研究機関(IARC)は世界各国、各地域からがん罹患情報を収集して「5大陸のがん罹患」として公表しています。「5大陸のがん罹患」のデータは、世界保健機関(WHO)がまとめている各国のがん死亡データとともに、IARCで入手が可能です。

(図4)部位別がん年齢調整罹患率の推移

(図4)部位別がん年齢調整罹患率の推移

(図5)年齢階級別乳がん罹患率の推移

(図5)年齢階級別乳がん罹患率の推移