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乳がんの疫学の最新動向

乳がんの死亡率

乳がんは世界的にみても女性に最も多いがんで、International Agency for Research on Cancer(IARC, 国際がん研究機関)の推計によると、2002年に新たに約114万人が罹患しています。また、女性のがんによる死亡の第1位となっていて、 2008年における女性乳がん死亡者数は約46万人でした*1

わが国では、がんの死亡動向は厚生労働省の人口動態調査によって全数把握されています。人口動態調査は明治時代から実施されている政府統計で、国際的にみても精度が高く、また公表時期も調査年から1年遅れと早いのが特徴です。人口動 態統計によるがん死亡データ(1958年~2009年)ならびにそれを用いたさまざまなグラフは国立がん研究センターがん対策情報センターのがん情報サービス 「統 計 グラフデーターベース」より入手可能です。

死亡率には,粗死亡率と年齢調整死亡率があります。粗死亡率とは、一定期間の死亡数を単純にその期間の人口で割った死亡率です。一方、年齢調整死亡率とは、集団全体の死亡率を基準となる集団の年齢構成(基準人口)に合わせたものです。一般にがんは高齢になるほど死亡率が高くなるため、高齢者が多い集団は高齢者が少ない集団よりがんの粗死亡率が高くなります。そこで、年齢構成が異なる集団の間で死亡率を比較する場合や、同じ集団で死亡率の年次推移をみる場合には年齢調整死亡率が用いられます。基準人口として、国内では通例昭和60年(1985年)モデル人口(昭和60年人口をベースに作られた仮想人口モデル)が用いられ、国際比較などでは世界人口が用いられます。

がん年齢調整死亡率の推移をみると、全がんでは男女あわせると1990年代後半から減少傾向にあり、部位別では、男女ともに胃がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がんなどで近年減少傾向がみられます。しかし、女性の乳がんについては、1960年代以降一貫した増加傾向にあり、近年でも明らかな増加がみられます(図1,2)。2010年の女性の乳がん死亡者数は12,455人であり、年齢調整死亡率は、大腸(結腸と直腸を合わせたもの)に次いで高く、人口10万対11.9人となっています。年齢階級 別死亡率は50歳代まで直線的に増加し、その後は70歳代まではやや減少しています。また、年齢階級別の年次推移をみると、50歳代後半以降の死亡率の増加が特に大きくなっています。(図3)

欧米諸国の乳がん年齢調整死亡率は、日本に比べかなり高かったのですが、1990年あたりをピークに減少傾向が始まっており、日本との差は縮まる傾向にあります*2

(図1)部位別がん年齢調整死亡率の推移

(図2)乳がん死亡率および罹患率の年次推移

(図2)乳がん死亡率および罹患率の年次推移

(図3)年齢階級別乳がん死亡率の推移

(図3)年齢階級別乳がん死亡率の推移