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乳がんの経過(再発、死亡など)に関するリスクファクター

生活環境因子

乳がん発症のリスクファクターは、これまで多くの研究が行われ、食事や栄養、身体活動などの生活環境因子について、様々な要因が明らかになりつつあります。しかし、乳がん経過(再発、死亡など)も関連する要因については、日本のみならず世界的にも研究が不足しており、まだほとんど明らかになっていません。そのため、明確な推奨もほとんどありません。
そのような状況にありますが、ここでは、現時点でわかっていることについて、最新のエビデンス・レビューの結果をご紹介していきます。

食事や栄養、身体活動などの生活環境因子とがんとの関連についてシステマティック・レビューを行い、推奨をまとめているものに、World Cancer Research Fund(WCRF、世界がん研究基金) / American Institute for Cancer Research(AICR、米国がん研究財団)が発行する報告書があります。この報告書は広く世界中で活用されており、アップデートも随時発表されています。

(乳がんの発症に関するリスクファクターはこちら)

2007年11月に発表された報告書である "Food, nutrition, physical activity and the prevention of cancer: a global perspective" [1] では、再発のリスクファクターについてはエビデンスが不足しているためほとんど記載がありませんでした。しかし、2014年になってようやく、ライフスタイルに関する疫学研究が最も進んでいる乳がんで、再発のリスクファクターについてまとめたアップデート [2] が発表されました。また日本では、日本乳癌学会の「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン 2.疫学・診断編2013年版」[3] に、世界の研究結果のレビューに基づく専門家パネルの評価が掲載されています。

以下に、WCRF/AICRおよび日本乳癌学会のレビュー結果をまとめたものを示します。

表では、「↑」はリスクを高める、「↓」はリスクを低下させることを表し、評価は4段階(確実、ほぼ確実、可能性あり、データ不十分)で行われています。また、リスクについては、全死亡(乳がんに限定せずすべての死因による死亡)、乳がん死亡、二次がん、再発について評価を行っています。

結果を見てみると、現時点では、診断時の肥満と診断後の肥満が乳がんの経過を悪くする可能性が高いという評価になっています。また、喫煙や飽和脂肪酸の摂取が死亡のリスクを高める可能性ありとなっていますが、確実と言えるほどではありません。

一方、診断前や診断後の身体活動が多いと死亡のリスクを低める可能性については、日本の評価では「ほぼ確実」、世界の評価では「可能性あり」となっています。その他、食物繊維や大豆製品が乳がんの経過を改善する可能性が検討されていますが、推奨できるレベルにはありません。

WCRF / AICR の2014年乳がんアップデートに関するまとめでも

エビデンスは増えてきているものの、研究デザインや実施上の制限により、観察されたリスクファクターと予後との関連が因果によるものか判断するには限界があり、委員会は、食事、栄養(身体組成含む)、身体活動の、乳がん診断後の女性、特にその死亡率の減少に対する影響について固い結論を出すことが不可能であると判断した
と記載されており、まだまだエビデンスが不十分であることが示されています。

そのようなニーズを背景に、世界ではいくつかの大規模乳がん患者コホート研究が開始されています。日本では、この希望の虹プロジェクトで行っているコホート研究が最大の乳がん患者コホート研究になります。これらの研究から今後、乳がんの経過の改善に寄与する要因が明らかになることが期待されます。