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研究を行う理由

1. 生活習慣

乳がんの予防については、これまでにたくさんの研究が行われてきました。なかでも、低脂肪食や大豆製品の摂取、肥満防止や運動などと、乳がんの予防との関連に関するエビデンスがかなり蓄積されています。

乳がんの再発を防ぐためにも、患者さんの日常的な食生活、運動などの生活習慣が深く関わっている可能性があり、生活習慣の改善によって、再発をある程度予防できるのではないかと考えられます。ところが、乳がんの予防に比べ、再発の予防については、生活習慣がどのような影響を与えるかという研究は、ほとんどといっていいほど行われておらず、科学的な証拠はほとんどないというのが現状です。

また、運動や肥満については、それらと乳がん患者さんの経過を検討する大規模研究が欧米ではいくつか計画・実施されているものの、まだまだ数は少なく、十分な根拠は得られていません。また、日本人と欧米人では肥満の程度などに差がみられることから、欧米での結果をそのまま日本人にあてはめることはできないため、日本におけるしっかりとした研究が必要と考えられます。

2. 代替療法

生活習慣と並んで乳がん患者さんの関心が高いのが代替療法です。多くの乳がん患者さんが、乳がんの再発や進行を予防するために、サプリメントや健康補助食品、ヨガ、鍼などさまざまな代替療法を利用しているようです。

このように多くの患者さんが利用しているにも関わらず、今のところ、再発を予防する効果について十分なエビデンスのある代替療法はなく、また、乳がん患者さんに効果があることを調べた研究はほとんどありません。さらに、代替療法は費用が高額であるということだけではなく、逆に治療に悪い影響を与えてしまう可能性があることや、副作用の情報が不足していることも問題となっています。

そのため、さまざまな代替療法の効果を調べることは、患者さんにとっても重要であると言えます。

3. ストレスなどの心理社会的状況

乳がん患者さんの生活には、治療に関することだけでなく、仕事や家事、家庭生活、周囲の人たちとの関係などにおいて、さまざまな困難やストレスが伴うことが知られています。また、将来に対して希望がもてなくなったり、うつ状態になってしまう患者さんも少なからずいらっしゃいます。

しかしながら、困難やストレスが多いことや、将来に希望がもてないこと、うつ傾向にあることなどが、患者さんのその後の経過に影響を与えるのかどうかを明らかにする研究は十分に行われていません。そのため、患者さんの支援において、そのような心理社会的状況に対するサポートが後まわしにされてしまう傾向にあります。長期にわたる闘病を余儀なくされる乳がん患者さんに対しては、医学的な治療だけでなく、心理社会的な側面へのサポートも欠かすことができないと考えられ、そのためには、心理社会的状況が患者さんのその後の経過に与える影響を明らかにすることが必要であると考えられます。

4. 痛みと緩和ケア

乳がんの手術後、腕のむくみ(リンパ浮腫)や運動障害、神経因性の疼痛などが起こることが知られています。これらの症状は術後数カ月から数年続く場合も少なくなく、患者さんの生活にさまざまな困難をもたらすことが考えられます。一方、がん治療の早期から、痛みなどに対する治療として緩和ケアを導入することが必要であると言われるようになってきました。緩和ケアは、痛みなどが発生した時点での、患者さんの苦痛を取り除くことに効果があるのはもちろんですが、QOLを含めた長期的な予後を改善する可能性もあります。

しかしながら、日本では、痛みの発生頻度や緩和ケアの普及について系統的に調べた調査は少なく、また痛みや緩和ケアの長期的な影響を前向き研究として調べた報告はほとんどありません。患者さんの痛みに対する適切なケアを提供していくためには、まず実態を把握し、長期的な影響を調べていくことが必要と考えられます。

5. QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活や人生の質)

かつて、がん患者さんの生活においては、「より長く生きること」が第一の目標とされ、たとえ治療の副作用によって障害が生じたり、生活に大きな困難が伴うようになったとしても、長く生きることが重要と考えられてきました。しかし、そのような治療が本当に患者さんのためになっていると言えるのかという反省や、医療技術の進歩によって病とともに生きる患者さんが増加したことを背景に、患者さんのQOL(生活や人生の質)が注目されるようになってきました。

患者さんご自身によるQOLの評価は、患者さんが「よりよく生きる」ために欠かすことができない重要な指標であるといえます。「より長く生きること」は患者さんにとって最も重要であることに変わりはありませんが、それとともに、「よりよく生きる」こともとても大切であると考えられます。そのため、この研究では、再発などの医学的な評価だけでなく、QOLという患者さんご自身による主観的な評価にも着目し、生活習慣や代替療法の利用、さらに現在のストレスやうつなどが、将来のQOLに影響しているかを調べます。

この研究で得られた結果によって、患者さんが長く、幸せに生きることをうながす要因や、それを妨げる要因を明らかにすることができると考えられます。